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NK細胞の「質と量」を可能な限り高めるように培養した高活性NK細胞療法には次の特徴があります。
1. 1回の治療に付き、活性化リンパ球約100億~150億個の大量投与を実現
2. NK細胞を大量に含み、NK細胞以外はすべて活性化T細胞(特に細胞傷害性T細胞)
3. NK細胞のがん細胞傷害活性は非常に高い状態で、少なくとも約3週間は持続
4. NK細胞が効果的な抗がん効果を持ち、からだ全体の免疫機能を高めるように、TRAIL分子、NKG2D分子、ケモカイン受容体、インターフェロンガンマ産生などがよく働くようにさまざまな工夫がなされている
5. この療法によって、全身の免疫力を早期に増強させることが可能
ニューシティ大崎クリニックの高活性NK細胞療法では、1回で100~150億個の活性化リンパ球を投与します。
がんは、10億個のがん細胞で直径1cmのかたまりをつくると言われています。直径3cmならば300億個近くになります。活性化リンパ球は点滴で静脈に入れると、まず全身に散らばったあと肝臓、脾臓に多くが集まってきます。このようにがん病巣やリンパ節にすべてが集まるのではありませんので、投与したリンパ球数が少なければ非力といわざるをえません。できるだけ大量に培養して投与することが重要なことになります。活性化して抗がん効果を高めたT細胞、NK細胞などのリンパ球をできるだけ大量に投与したほうが良いことは、動物実験でも明らかになっています。
当クリニックでは、1回で100億個以上の活性化リンパ球を投与するため培養技術を改良してきました。
30ccあまりの血液から、T細胞はもちろんのこと、時には100億個を超える高活性のNK細胞を、医薬品だけを使った安全な刺激法で培養することを可能にしています。
図1Aは、最近の患者さんへの投与リンパ球数の分布図です。確認できますように、現在は100~150億個の活性化リンパ球を1回で投与していますが、この中の高活性NK細胞を調べると、図1Bに示すように患者さんによってリンパ球内の20%から80%までと大きな差があるものの、平均で52%が含まれていることが確認できています。
NK細胞だけを培養することに特化する必要はまったくなく、むしろ活性化Tリンパ球が混在し、異なるメカニズムでがん細胞を攻撃できるほうが良いと考えておりますので、NK細胞の含有率が活性化リンパ球の約50%前後になるように調節しながら培養法を工夫しています。こうした大量投与よって、100 億個以下の投与ではみられなかった末梢血中のリンパ球の増加やNK細胞増加(免疫力増強効果)が、がん患者さんにおいても持続的に見られるようになりました。
がん患者さんをみると、NK細胞の数は正常にあるのにNK活性が非常に低くなっている人がいます。そのような場合、十分に働いていない機能を正常に戻してからNK細胞を使わなければ効果は期待できません。たとえばNK細胞には、CD3ゼータ鎖という分子があります。この分子はNK細胞のADCC活性に必須で、抗体からの刺激をNK細胞の中に伝達して活性化させる重要な分子です。がん患者さんの元のリンパ球内にはこの分子が非常に少なくなっていることが報告されています。当クリニックの検査でも、がん患者さんでは健常人に比べNK細胞のCD3ゼータ鎖がほとんどなくなっており、NK細胞は働きたくても十分働けない状態になっています。しかし、高活性NK細胞療法では、NK細胞を大量に増やしながらCD3ゼータ鎖を元の状態に回復させることができ実際にADCC活性がよみがえることを確認しています。(図2)
大量に増やしたNK細胞を点滴で血管に入れでも、それらが実際にがん細胞のところに行かなければ、その抗がん効果は極めて限定される可能性があります。患部に効率よく到達するには、がん細胞が作りだす独特なたんぱく質で、リンパ球を呼び込む「ケモカイン」に反応するアンテナをNK細胞が出していることが重要です。このアンテナを出すことによって、NK 細胞はがん細胞のあるところへ誘導されます。最近の研究で、さまざまな種類の異なるがん細胞がこうしたケモカインを作ることがわかってきました。1つのケモカインに対応する「ケモカイン受容体」は、血液中のNK細胞や、以前その効果が疑問視されたLAK細胞にはほとんどありませんが、当クリニックの方法で大量に増やしたNK細胞の多くが、ケモカイン受容体の1つであるCXCR3をたくさん持つことが明らかになっています(図3)。このケモカインとケモカイン受容体が結合すると、NK細胞は吸い寄せられるように血管の外にあるがんに向かっていくのです。
ニューシティ大崎クリニックの高活性NK細胞療法では、がん細胞を殺傷する能力を持つ分子「TRAIL」と「NKG2D」を大量に含んだリンパ球を体内に戻します。 さまざまながん細胞の表面にはTRAIL(トレイル)受容体という分子があります。これは正常細胞にはなく、がん細胞になると出てくるため、免疫細胞ががん細胞を見分けて攻撃するには非常によい目印になります(図4A)。
しかもこのTRAIL受容体を刺激するとがん細胞に死のシグナル(death signal)が送られ、がん細胞が死ぬことが知られています。最近は、このTRAIL受容体に結合するがん治療薬が開発されています。この薬剤は日本でも将来使えるようになると思いますが、当クリニックでは培養法に工夫を加えて、TRAIL受容体に結合するTRAIL分子を大量にNK細胞、T細胞に出させています(図4B)。
ただし、多くのがん細胞はTRAIL受容体からの刺激に対し抵抗性を持つようになることも知られています。それでは、どうしたらTRAILを利用して効率的にがん細胞を殺すことができるでしょうか。この解決方法が最近多くの研究でわかってきました。あらかじめ抗がん剤や放射線を使ってがん細胞を弱めるとその抵抗性がなくなり、がん細胞はTRAIL受容体からの刺激で非常に死にやすくなるのです。
TRAILの関与が考えられる実際の治療を1つ挙げます。肝細胞がんの治療として、5-FUの肝動注とインターフェロンアルファの注射を組み合わせることで良い成績が出ています。この治療効果の理由がいくつか推定されていますが、その1つは、5-FU 持続肝動注を使うことで肝細胞表面にTRAIL受容体が誘導され、一方インターフェロンアルファでリンパ球にTRAILが誘導され、両者が結合することでがんが細胞死をおこすというものです。つまり、抗がん剤を使ってがん細胞のTRAIL受容体を増やし感受性を高めながら、TRAIL陽性のリンパ球を使うと抗がん効果が期待できると考えられるのです(図4C)。
一方、NKG2DはNK細胞、細胞傷害性T細胞、γδT細胞の細胞表面にある分子です。この分子はMICA/B(ミックABと呼びます)という分子と結合しますが、面白いことに、MICA/BはTRAIL受容体と同じように正常細胞にはなく、がん化した細胞や傷害を受けた細胞の表面に出てきます。がん細胞表面のMICA/Bに、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球のNKG2Dが反応するとこれらの細胞は活性化され、がん細胞に向けてグランザイム、パーフォリンを放出しがん細胞に穴を開けて攻撃します(図5A)。
こうした研究結果から、NKG2Dという分子がNK細胞やT細胞の表面にたくさんあるほうが効果的と考えられています。ニューシティ大崎クリニックで使うNK細胞は、培養増殖させることで NKG2Dが5倍に増え、T細胞においても2倍に増えています(図5B)。 現在、TRAILやNKG2Dのような、NK細胞を活性化させる分子が20種類以上存在することが分かっています。