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50歳代の乳がんの患者さんの症例です。直径2cmの乳がん(浸潤性乳管がん、ステージIIa)で手術し、その後アリミデックス(経口治療薬)によるホルモン療法を行いました。2年後に腫瘍マーカーが上昇したため精査したところ、肝臓に直径2.5cmの転移が1個見つかり3週に1回タキソテールで治療したところ、9ヵ月後に肝転移は消失しました。 タキソテールをさらに半年間ほど続けた後、ホルモン療法に変更しましたが、その7ヵ月後には腫瘍マーカーが再び上昇し、CT検査で直径2cmほどの肝転移が見つかりました(写真左)。
抗がん剤のCEF療法が開始され、ほぼ同時にニューシティ大崎クリニックのがん免疫細胞療法も併用して開始されました。 高活性NK細胞療法と抗がん剤の併用で、5ヵ月後に転移巣は消失し(写真右)、抗がん剤はさらに6ヶ月間続けられました。 1回目の転移が消失した後のホルモン療法で再び転移したことから、ホルモン療法は効かないことが予想されたため、経口抗がん剤TS-1と並行して高活性 NK細胞療法を2ヶ月に1回に減らして治療を続けていますが、定期的な腫瘍マーカーも正常値を維持し、CT検査で再発・転移は見つかっていません(図)。
現在まで、1回目の肝転移から6年以上、2回目の肝転移がでてから4年半、消失してから再発することなく4年が経過しています。2回目の転移の抗がん剤治療は1回目より難しくなりますが、1回目より早めに消失し、高活性NK細胞療法を併用することで治療効果が高まったと思います。 抗がん剤とがん免疫療法を併用して効果が出る条件は、その免疫療法によって患者さん自身の免疫力そのものを上げることができるかどうかが、カギを握ります。 この患者さんも、治療前後の血液検査で、NK細胞の含有量は18%→35%、NK活性は 23%→61%と免疫力を測る数値がいずれも良く上昇しました。また、T細胞ではNK細胞によく似た性格のNKT細胞(CD3+CD56+リンパ球)が 15%に増え、NKG2D陽性T細胞も60~70%と強い活性化が維持されています。高活性NK細胞療法でこのような高免疫状態が達成され、再発や新たな転移を防いでいると考えられます。 抗がん剤にがん免疫療法を併用する治療法は広がりつつあります。転移や再発防止のためにも、この治療法が近い将来広く認知され、相互に最大限の効果をあげる投与方法が検討されることを期待しています。
右乳房に3cm大のしこりがあるのに気づき診察を受けたところ乳がんと診断された患者さんの症例です。全摘手術を行いましたがリンパ節転移もあったため、術後に抗がん剤を4クール行いました。 抗がん剤のあとホルモン療法に変更し、再発の兆候もなく順調に経過していましたが、手術をして3年ほどたったところで乳房を切除したあとの胸壁に3cm大の硬いしこりが現れ、2ヶ月のあいだに急速に大きくなりました。 併せてCTスキャンでも、肝臓に一部はいくつか融合した2~6cmの大小の転移が20個以上見つかり、乳がん局所再発及び多発性肝転移と診断されました(写真1、2、右)。
驚いた患者さんご夫婦はいろいろと可能性のある治療方法を探していらして、ニューシティ大崎クリニックのホームページをご覧になって相談にみえました。肝転移が非常に進行した状態でしたが、経口抗がん剤のTS-1を主治医にお願いし、高活性NK細胞療法を同時に開始することにしました。 第1回目の免疫細胞療法はTS-1服用を始めてから2週間で行ないました。その3日後に、胸に出た硬い再発腫瘍が急に軟らかく小さくなっていることに患者さんご自身が気づき、さらに2回目投与後には胸壁の腫瘍はほぼ触れないほどになりました。 肝臓は最初は腫れて大きく腹部の触診でもはっきりとわかりましたが、2ヵ月後にはそれも触れなくなり、当時に体調も良くなっていきました。 投与5ヵ月後のCTスキャンでは、6cmの一番大きかった転移だけでなく、その他の多数の散在した転移がなくなり、1ヶ所に小さく残るだけになりました(写真1、2、左)。 この間の治療はTS-1とがん免疫細胞療法だけでしたので、副作用はTS-1による一時的な軽い食欲低下などの症状だけで、主婦としての日常生活を過ごすことが普通にできていました。 さて、この患者さんの免疫状態が治療前後でどう変化したか見てみます(図)。
毎回150億~200億個の活性化リンパ球を投与しましたが、そのうちの約40%がNK細胞(60-80億個)、残りが活性化T細胞(おもにキラーT細胞)でした。 その結果、血液中のNK細胞は治療前の8.7%から10回治療後には3倍以上の27.6%に増えました。それに伴いNK活性も約2倍に上がっています。またNKG2D陽性T細胞(健常者平均40%)は、治療前が17.0%ととても低かった状態から52.9%とこれも3倍以上に上昇しました。
高活性NK細胞療法は、大量のNK細胞を含む活性化リンパ球を投与することによって、このように血液中のNK細胞やNKG2D陽性T細胞、NK活性が実際に向上することが特徴です。つまり、からだの免疫力を確かに高めているわけです。 これは大量の高活性NK細胞とT細胞が入ったことによって、がんで抑えられおとなしくなっていた元々のリンパ球も影響を受けて活発になったことを示しています。 がんには免疫力を封じ込め、免疫が効かないようにする強力な抑制作用があります。TS-1はがん細胞を殺傷する力とともに、がんの免疫抵抗力を弱めて(がんの免疫感受性を上げる)、免疫療法が効果的に働くようにすると考えられます。 がんとの闘いには、抗がん剤と併用して、からだの免疫力を高く維持できる高活性NK細胞療法が大きな助けになっていることがわかる一例です。