高活性NK細胞療法

1. 免疫力増強の証拠は?

活性化リンパ球療法で免疫力があがるとよくいいますが、では本当に免疫力があがったという証拠はあるのでしょうか。
免疫力によってがんの発症、進展、転移が抑えられていることはさまざまな研究から明らかですが、この免疫力を表す代表が血液のNK活性です。NK活性の低い人は高い人に比べ、男性でも女性でもがんの発症率が高いことが報告されています(ランセット、2000年)。活性化リンパ球や樹状細胞を使ったがん免疫細胞療法では、これらの免疫細胞によって直接的、間接的にがん細胞を攻撃することを狙っていますが、もう1つ大事なことは活性化した免疫細胞の投与によってその人の免疫力を高めることです。とくに、化学療法後の免疫力の弱ったときや、手術後の再発予防のために、免疫細胞療法で免疫力をあげることは理にかなったことです。
適正な免疫反応は、リンパ球などの免疫細胞が相互に秩序だって反応して進みます。数百種類あるリンパ球表面にある分子や細胞から分泌される多数の活性物質が複雑に絡みあいながらその反応を作っていきます。このような免疫反応で生体を正常に維持し病気にならないようにする能力を総称して免疫力といっていいと思います。したがって、1つだけの数値で免疫力を表すことはできません。しかし、その免疫力を推定することは可能です。 例えば、血液中のリンパ球数をみたり、特定のリンパ球表面分子の変化を調べたり、サイトカインと呼ばれる活性物質を測定したりすることです。
当クリニックでは、血液中のリンパ球数(割合でなく絶対数)、NK活性、NK細胞の比率、NKG2D分子陽性率をみて、免疫力を経時的に調べています。

2. 末梢血リンパ球数の増加

がん患者さんでは末梢血リンパ球数が減っていることが知られています。これは、がんという病態だけでなく化学療法、放射線療法の影響が考えられます。末梢血リンパ球ががん組織やリンパ節へ行くことから、免疫力を考えたとき数が少ないよりは正常かそれ以上になっていることは重要なことです。
大量の高活性NK細胞を含んだ活性化リンパ球を毎回150〜200億個という大量を投与し、血液中リンパ球数に変化があるか調べてみました。図1に4回以上の投与を行った患者さん33例の治療前後の血液中リンパ球数の変化を示してあります。これは増えた患者さんだけを選んでいるのではなく、無作為に33例のデータを取り出したものです。
免疫力増強効果1
当クリニックの検査機器では、健常人の血液中リンパ球は平均2000個/μlになります。図1で示すように、治療前の33例の患者さんは平均1100個とやはり少なくなっており、とくに1000個以下の患者さんが42%を占め、1500個以上ある患者さんは24%にすぎません。これは、がんそのもの、あるいはがん治療によって減少したと考えられます。しかし、当クリニックでの治療後には平均1800個にまで回復し、1500個以上は患者さんの24%から58%になり、2000個以上は2人から10人に増えました。図2は、胃がん(ステージIIIB)切除後の再発予防として当クリニックで治療を行っている患者さんのリンパ球数の変化を治療開始時から1年間にわたって調べたものです。投与ごとにリンパ球数は増え、投与が1ヶ月に1回になっても2500〜3000個前後を保っています。
免疫力増強効果2
リンパ球数が正常域あるいはそれ以上になったことは、体の免疫状態を整えるために必要な最低条件が満たされたと解釈してもよいのではないでしょうか。1回の投与数が100億個以下の場合には、このような末梢血リンパ球数の上昇はありませんでしたので、末梢血リンパ球数を増やすには、100億個以上のリンパ球を繰り返し投与していかないと難しいと思われます。


▲ページのトップへ